高校の微積分について

傾きを積分したら元の関数?

- エクセルによるイメージの可視化 -


高校の数学IIで「微分は関数f(x)の接線の傾きを与える」と教わります.この傾きのイメージは,関数の2点f(a),f(b)を通る直線を描いて,bをaに限りなく近づけることで与えられます.次に,「微分するとf(x)になる関数F(x)を,f(x)の不定積分という」.さらに,「積分は関数f(x)の面積である.なぜなら面積を微分するとf(x)になるから」と習います.ところで,傾きを積分したらどうなるのでしょうか?高校の教科書には傾きの積分の話が見当たりません.微積分の話の真っ先に微分は関数の傾きを与えるとの説明があるのに,その後の微分と積分の関係の説明には傾きは使われません.傾きはどこに行ったの?と戸惑った人が少なからずいるのではと思います. もちろん,数学的にはf(x)とF(x)の関係が示されたのですから,それで十分なのですが,本書はこの戸惑いに答えることを目的とします.

本書ではイメージを主体に解説するので,エクセルを用いて図を描きながら話を展開します.エクセルは便利なツールで,傾きや面積のイメージを描くことができます.

イメージの描画を工夫していると,これまで式の証明を通して理解していたつもりの微積分の公式が,改めて不思議に思えてきたりします.微分の定義式を用いて(微分の公式を使わずに)多項式の導関数を描画してみると,あれ!?なぜx^nの導関数はnx^(n-1)になるのだろう?とか,exp(x)の導関数がexp(x)にピタリと重なることに,え!?なぜだ?といまさらながらに驚いたりします.筆者は,log(ax)の導関数を描画した際には,a ( > 0)がどのような値をとっても,導関数の描画結果が少しも変わらないことに新鮮さを感じてしまったりしました.式の証明だけでは味わえない感覚かも知れません.本書では,エクセルにより微分,積分を実行して,その結果を描画する寄り道をしながら,論を進めています.寄り道ついでに,高校生の皆さんの関心が高いであろう,もしくは多くの理系の大学生の皆さんに懐かしい(?)センター入試を可視化しながら解いています.入試問題の作成者は問題のイメージをクリアに捉えて,あれこれと工夫されたのだろうなと,読者の皆さんにも作成者の視点が見えてくることでしょう. なお,とりあえず考え方だけ理解したいという人には,エクセルの使い方の節を読み飛ばしても大丈夫な構成としています.

本書は 「高校の微積分_傾きを積分したら元の関数?:Exelにようるイメージの可視化[Kindle版] 」と題して,2014年5月からアマゾンよりkindle版として出版しています.

本書で紹介しているエクセルファイルはここよりダウンロードできます. エクセル2007で作成してあります.2010, 2013でもそのまま使用可能です.ファイルの利用は利用者の責任で行ってください.

目次は以下の通りです.


1. はじめに
2.微分
 2.1 微分係数
 2.2 関数f(x)の2点を通る直線の描画
  2.2.1 一次関数
  2.2.2 二次関数
  2.2.3 2点を通る直線
 2.3 公式を使わないで微分を実行
  2.3.1 多項式の微分
   (a) 描画
   (b) なぜx^n の導関数はnx^(n-1)なのか?
  2.3.2 三角関数の微分
   (a) 描画
   (b) なぜsin xの導関数はcos xなのか?
  2.3.3 指数関数の微分
   (a) 描画
   (b) なぜexp(x)の導関数はexp(x)なのか?
  2.3.4 対数関数の微分
   (a) 描画
   (b) なぜlogxの導関数は1/xなのか?
  2.3.5 合成関数の微分
  2.3.6 逆関数の微分
 2.4 センター試験問題
  2.4.1 2014年 数学II 第2問
  2.4.2 2012年 数学II 第2問

3. 積分
 3.1 関数から面積へ
  3.1.1 不定積分
  3.1.2 定積分
  3.1.3 区分求積法
 3.2 区分求積法の描画
  3.2.1 棒グラフ
  3.2.2 棒グラフの面積
  3.2.3 関数を変えて区分求積法を描画
 3.3 面積の微分は元の関数
 3.4 公式を使わないで積分を実行
  3.4.1 多項式の積分
  3.4.2 三角関数の積分
  3.4.3 指数関数の積分
  3.4.4 反比例関数の積分
 3.5 センター試験問題
  3.5.1 2014年数学II 第2問(つづき)
  3.5.2 2014年数学II 第2問(つづき)

4. 傾きを積分したら元の関数
 4.1 傾きから元の関数へ
 4.2 傾きの積分の描画
  4.2.1 多項式の傾きの積分
  4.2.2 三角関数の傾きの積分
  4.2.3 指数関数の傾きの積分
  4.2.4 対数関数の傾きの積分

演習問題の解答


  古橋 武
  名古屋大学大学院工学研究科
  情報・通信工学専攻
  Email: furuhashi at nuee.nagoya-u.ac.jp


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